【主張】重視すべき過半数代表者
静岡県三島市の印刷会社が、労働基準法施行規則に定められた方法で選出しなかった「過半数代表者」を相手として締結した労使協定(36協定)に基づき時間外労働をさせたとして、法人と管理者を地方検察庁へ書類送検した(本紙7月18日号3面既報)。
時間外労働の違反に限らず法令履行のチェック機能を幅広く担う「過半数代表者」の存在意義が増している。企業としては、「過半数代表者」の選出手続きの適正化が、法令遵守と労働条件確保の大前提となっていることを強く認識すべきである。
36協定の労働者側当事者である「過半数代表者」は、労基法第36条第1項によれば、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合の代表者となるが、そうした労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者を選出する必要があるとしている。選出方法としては、労基法施行規則第6条の2第1項において、「投票、挙手等」に基づくことが義務付けられている。
今回、書類送検された印刷会社では、管理者が一方的に「過半数代表者」を指名したうえ、時間外労働が適法となるような上限時間を定めた36協定を締結していた。選出方法が違法であることを認識していたことなどから、悪質事案とみて書類送検に踏み切ったと考えられる。
36協定は、本来違法である時間外労働の刑事責任を免責する極めて重要な効果を有する協定である。一方当事者の「過半数代表者」が、使用者の指名に基づいていたり、従業員親睦会の代表者がそのまま就任していると、労働条件のチェック機能が有効に果たし得ないことは明白である。
労基法では、時間外労働に限らず、賃金控除や事業場外労働、裁量労働などの様ざまな制度適用において「過半数代表者」との協定締結を求めている。まして、労働組合組織率の低下に歯止めがかからない状況にあって、その役割は益々拡大しつつあるのが実情である。
「過半数代表者」の適正な選出が広く確保できれば、労使自治の拡大にとっても有益となろう。