5Sで生産性不向上?/郷労働法務事務所 高橋 舞友
5S――①整理(Seiri)、②整頓(Seiton)、③清掃(Seisou)、④清潔(Seiketsu)、⑤しつけ(Sitsuke)。
とても幸せなことだと思うのだが、私はこの言葉を社会人1年生のとき、入社してすぐに上司に教えていただいた。いやはや、それからウン十年…。当時も今も、仕事あるいはプライベートにおいてしばしば口にする。
整理…必要なものと不必要なものを分類して、不必要なものを捨てたり処分すること。整頓…必要なものを必要なときにすばやく取り出して使えるようにすること。清掃…掃除をしてきれいな状態にすること。清潔…上記3つの「S」整理・整頓・清掃を維持して衛生を保つこと。しつけ…決められたルールや手順を正しく守る習慣をつけること。
日本で生まれた概念だそうで、多くは製造業やサービス業などで職場環境の維持改善や職員のモラルやマナー向上のためのスローガンとして掲げられたりしている。会社が組織として、継続して時間と労力をかけて進めていく。会社によっては推進グループや部門を設置して、計画を立てて推進したり、制度を整備したりする。
私見だが、5Sが身についている方のデスクや職場環境はとても整備されているばかりでなく、仕事の進め方にまで5Sが浸透しているようで、効率が良く、仕事やレスポンスが早く、仕事が丁寧である。人への接し方も丁寧な方が多いと思う。
近年、社内の空気はもっぱら「生産性向上」だが、「5S」が徹底されている会社では職員のみなさんの表情も生き生きとしていて、業務効率が上がるような試みや意見が上がってくることが多い。
だが先日、ある方から「『5S活動』している会社はそこに労力や時間をかけていて、『生産性向上』の流れに逆行しているのでは?」という意見をいただいた。なんと…、「5Sのできる会社・人」=「仕事のできる会社・人」という式は完成しないのか。
近い将来、ヒトの業務の多くはAIに取って代わられるといわれる。コンビニやスーパーで、誰とも顔を合わせることなく品物を選んで会計を終えるだろう。社労士業務はAIがやってくれるので手続きはよりスムーズで間違いもなく、クライアントは喜ぶかもしれない。でも私は思う。会社をきれいに整備し維持していこうという職員は、きっと会社を、お客様を大事にできる。そしてそういう仕事をする自分自身を大事にする。そんな仕事をするヒトの業務は、そう簡単にAIに代われるものではない。少なくとも私はそういう社労士でありたい。
郷労働法務事務所 高橋 舞友【北海道】
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