新元号時代の業界展望/社会保険労務士法人大野事務所 代表社員 大野 実
十年一昔を重ねること3回、俗にいう一世代30年にわたった平成も新元号となる。この30年間を振り返るとき、多くの自然災害、東西冷戦の終結、リーマン・ショックによる経済社会への大打撃、インターネットに象徴される情報技術の進展と急速なデジタル化・グローバル化など、その変化の大きさとスピードの速さは目まぐるしいばかりである。
そのような中で社労士制度も50年を経て、まさに新たな一歩を踏み出す区切りの年としても感慨深いものがあるが、過去の感慨に浸る猶予はないのが現実のようだ。経営環境の現実は、社労士業界にも待ったなしでこの急激な変化への対応を求めている。どんな人間組織も持続的な成長なくしては存続できない。でなければ停滞し陳腐化し、やがては朽ち果ててしまう。成長のためには絶えざる新陳代謝とその時々の組織の成長ステージに合わせて運営システムを刷新していく必要がある。持続とは、組織構成員の世代を超えて存続することであり、そのためには多種多様な属人的要素を越えて、変化を活かすための仕組み、組織の構成員とは独立した組織自体の運営力が不可欠である。変化は環境への適応であり同時に絶えざる体質の強化でもある。変化は変革に、成長は発展へと次元を上げていく努力が必要であるが、その前提にはまず変化を受け入れなければならない。その意味では変化こそが唯一不変の真実かもしれない。ここでは参考までに、今後広く活用可能性がある経営手法のひとつとして、最近取り上げられることも多い「デザイン経営」について触れておきたい。
2018年5月、経済産業省・特許庁が、デザインによるわが国企業の競争力強化に向けた課題の整理とその対応策として「『デザイン経営』宣言」という政策提言を発表した。「日本は人口・労働力の減少局面を迎え、世界のメイン市場としての地位を失った。第4次産業革命により、あらゆる産業が新技術の荒波を受け、従来の常識や経験が通用しない大変革を迎えようとしている。そこで生き残るためには、顧客に真に必要とされる存在に生まれ変わらなければならない。そのような中、規模の大小を問わず、世界の有力企業が戦略の中心に据えているのがデザインである。一方、日本では経営者がデザインを有効な経営手段と認識しておらず、グローバル競争環境での弱みとなっている」で始まる宣言には、これからの経営の方向について、多くの有益な視点を含んでいる。
新たな元号の時代に、社労士が日々業務を営む中で「いかなるデザインを造り活かしていくか」が今、問われていると思う。
社会保険労務士法人大野事務所 代表社員 大野 実【東京】
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