【今週の労務書】『写真記録・三島由紀夫が書かなかった近江絹糸人権争議――絹とクミアイ』

2019.03.30 【書評】
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未公開写真を多数収載

 交渉当事者には不本意だろうが、「官製春闘」とまでいわれるこのご時世、労使紛争華やかなりし時代を知る者には寂しい限りではなかろうか。

 右肩上がりだったあの頃との比較自体が間違いかも知れないが、有名な表題争議を扱った本書を手に、働くこと・働かせることに今一度思いを馳せてみるのもいい。

 当時の組合長が所蔵していた中から200点を超す未公開写真を著者の取材記録とともに載せ、ページを繰るたびまるでモノクロ映画のコマ送りをみているかのような感覚に陥り、あの頃へとタイムスリップできる。

 登場する産別(全繊同盟・現UAゼンセン)への著者の深い思い入れも感じるが、三島由紀夫が「絹と明察」で伝えていない争議の真実にも触れられる価値ある一冊。

(本田一成著、新評論刊、TEL:03-3202-7391、2400円+税)

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平成31年4月1日第3203号16面 掲載
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