高齢者・若者を大切に/出口社労士事務所 所長 出口 啓一

2019.04.07 【社労士プラザ】
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出口社労士事務所 所長
出口 啓一 氏

 三重県は南北に細長く、南に行くほど過疎地域も増え、高齢化率も増加している。私の所属する南勢支部では一町を除くすべての自治体で老年人口が全国平均を上回り、さらに三重県平均を上回っている。生産年齢人口にいたってはすべての自治体で全国平均以下かつ三重県平均以下である。

 この地域における事業所の未来像はどうなるのであろうか。ただでさえ求人難が続いており、人手不足は慢性化している。50歳以上の社員ばかりという工場もまれではない。

 この地域で事業を継続していくうえでの課題、それは高齢者にやさしく、若者を大切にする事業所づくりである。

 高齢者の生活は、昨今の政府の年金政策などにより貧困の度合いを高めている。高齢者がゆとりをもって労働を行う時代は過去のものとなりつつあり、いまや生きるために労働をすることを余儀なくされている(それを生涯現役社会といっているが)。

 高齢者の労働の動機はますますひっ迫したものとなり、今後の大きな労使問題となることは想像に難くない。高齢者が安全・快適に働ける職場つくり、柔軟な労働条件の整備がなによりも重要となるだろう。

 メンタルの問題を抱えている若者が増えている。その原因は若者自身にあるのではなく、若者を取り巻く今の社会環境にあると考えている。勝ち組・負け組という価値観をふりまいてきた大人の責任は大きい。若者を孤立させてしまったのだ。うつ病の若者に訊ねてみた。「世界から愛されていると感じる?」。彼は明確に否定した。しかし、厳しく指導されていた50歳過ぎの女性幹部は、世界から愛されていると明言した。

 管理職に厳しく注意されるとパワハラと思ってしまう。さらに、いとも簡単に職場の上司を敵と感じてしまう(もっとも深刻なパワハラ問題も職場にはある)のが、企業が直面している職場の現状である。お互いに助け合い、支え合うことが労働する者の連帯であるにもかかわらず、それが特殊な状況になれば、やがて職場は破綻するだろう。いずれにしろそうした若者の状況を理解し、中間層の意識改革と、職場風土の改革、メンタルヘルスのサポート態勢の確立が求められている。

 高齢者と若者を大切にする事業所、これが今後この地域のキーワードだ。この道は困難な道である。しかし進まなければならない。

 「職場はプラトニックラブの場である」。ある会社の社長がいっていた言葉を思い出す。

出口社労士事務所 所長 出口 啓一【三重】

【連絡先はこちら】
〒516-0012 三重県伊勢市通町209‐3
TEL:0596-22-0283

平成31年4月8日第3204号10面 掲載
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