【主張】ベテラン添乗員戦力強化に思う
本紙2月20日号2面で報道した「添乗員に自己点検で高齢者戦力化」という記事を興味深く読んだ。添乗員派遣会社の業界団体である㈳日本添乗サービス協会は、高齢化する添乗員の戦力強化に向けた手引をまとめたというのがその内容。ベテランは、添乗経験の豊富さが強みになる一方、一部で「自分の添乗スタイルに固執したり、周りの意見に耳を傾けずに頑固で横柄な態度を取る傾向がある」ため、定期的に自己点検できるガイドラインをまとめて、業界あげてサービス向上に努めようという趣旨である。
庶民の楽しみの1つであるバス旅行は、家電と同じくデフレの影響を受け、20年前の料金の半値にまで下がっている。一昔前、添乗員は裏方、バスガイドが主役で両者がセットされていたが、今日では添乗員が両方の役目を負わされているのが実態のようだ。サービス向上は業界としては、当然のこと。ただ、顧客は安かろう、悪かろうを承知するわけがなく、ほとんどすべてのツアーで解散前にアンケートを取っているから、添乗員が横柄だった記憶はない。
平成22年5月1日、東京地裁は、A社に対し、「添乗員の労働時間は算定し難い」とはいえない、とみなし労働時間制の適用は不当と判断し、控訴審の東京高裁も原審を支持している。ところが、同年7月2日同じ東京地裁で同じ被告A社の事案では、海外添乗業務は、事業場外みなし時間制が適用される、と判示。海外と国内の違いとはいえ、この混乱によって、A社労組支部執行委員長に対する不当労働行為が都労委、中労委で認められたにもかかわらず、行政訴訟という会社の強気の姿勢にもなったと思われる。
バスツアーでは、真っ先にスケジュール表が配布され、あちこちの土産店にひっぱり回されるのが常だ。会社とのコンタクトは携帯電話によって常時取られているようだから、事業場外みなし制により、コストを引き下げるのは無理とも思える。添乗員は誰でもなれるわけではなく、旅程管理主任者資格を有しないとなれない。利用者のひとりとしては、荒れた労使関係の是正の方もお願いしたい。