【主張】縁故採用がなぜ悪いというのか

2012.03.12 【主張】
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 ご存じの方も多かろうが、岩波文庫で知られる岩波書店は、新規大学卒業者の採用募集に際し、応募者については「著者等の紹介」を条件とした。これが一部マスコミによって大々的に報じられ、厚生労働省が事実関係の把握を行うことになった。同省は、企業に対して、応募者の基本的人権を尊重し、広く応募の門戸を開き、適性・能力に基づいた公正な採用選考を行うよう周知・啓発を行っているから、事情聴取したと経緯を明らかにしている。

 周知・啓発は、昨年4月時点で未就職大卒者が10万人も生じた超氷河期だけに当然のことともいえるが、出頭させるほど大仰に騒ぐ問題か、といわざるを得ない。

 募集方法の自由について、「企業が何人かの労働者を採用するという方針を立てた後には、採用の自由は労働者をいかなる方法で募集するかについての自由として現れる。使用者は、労働者を採用するに当たって、公募によると縁故募集によるとを問わず自由であり、また公募の方法としても、公共職業安定所、民営職業紹介所、学校、広告情報雑誌等、いずれを通じて行うことも自由である」(菅野和夫「労働法9版」)。

 「極端なことをいえば、試験の成績の良い者を不採用とし、成績は劣るがファイトのある者を採用しても企業の自由裁量である。私企業において特定の労働者の採用を強制されるべき法律上の義務(採用者の拘束)はない」(安西愈弁護士)。

 ただ、両氏とも障害者雇用促進法や雇用均等法上の募集・採用禁止等には当然従うべきであり、この規制は強まりつつあると警鐘を鳴らしているので、注意が必要だ。

 出頭した岩波書店は律義にも「著者等の紹介が難しい応募希望者についても、応募機会の確保を図っている」など複数の緩和措置を挙げ、厚労省も考え方や実態に齟齬はないと確認している。法令による強制義務の縛りに従っているのだから弁解には及ばない、と岩波にはいいたい。採用の自由を堂々と述べて欲しかった。老舗になるほど「縁故採用」が多いのは実態だが誰からも非難の声は聞かない。

平成24年3月12日第2864号2面 掲載
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