【主張】非正規の呼称変更と連合の立場
厚生労働省は、このほど今後の雇用労働政策の指針となる「望ましい働き方ビジョン(仮称)」の骨子を明らかにした(本紙3月12日号1面)。
ビジョンでは、非正規を中心とする雇用の安定、公正、多様性と企業経営の自由との共存を図っていくことが重要とし、無期・直接雇用への転換促進、正規・非正規間の均等・均衡処遇の促進を強化すべきとしている。これまでどちらかというと無目的的に「オール正社員化」を訴え続けてきたことと比較すれば、使用者側も興味を抱く内容となっている。とりわけ非正規の呼称を改めようと呼びかけているが、その進め方を具体的に提示しているのがいい。
「一定の価値観やイメージで正規・非正規に区分するのではなく、雇用形態を法的な視点からみた要素(労働契約期間の定めの有無、所定労働時間、直接・間接雇用)を組み合わせた呼称(有期短時間労働者など)とすることが適当」としているのがそれだ。
他にもお説ごもっともな点が多々あるが、ひっかかるのは、与党支持の連合との関係。ビジョンを作成するに当たって、支持団体にお伺いをする必要はないが、スジは通すべきではなかったか。
連合は、07年10月、非正規雇用で働く未組織も含めた労働者の賃金・労働条件の改善やネットワークづくりなどに取り組む「非正規労働センター」を組織内に設置し、正規社員に対置するかたちで非正規が認知されることになった。これにより連合は、正規雇用の組合員のためだけの運動にとどまらず、非正規雇用で働く未組織労働者の労働条件底上げや諸制度の見直しに本腰を入れていくことを明らかにしたわけだ。
今回のビジョンはそのお株を奪ったというのはいい過ぎだが、連合としては内心あまり面白くはなかろう。使用者の立場からいえば、非正規への風向きはやや変わったものの、依然として労働政策と労働運動の両面から圧力は強まってくるのは間違いない。
非正規の呼称変更は、ことほどさように思惑どおりにいかない側面がある。コスト云々の主張ばかりでは、この難関は越えられまい。