【主張】パート年金拡大の視界は不透明
民主党政権の政策はどの時点で捉えればいいのか、よくうわさされる。パートタイマーの厚生年金加入問題は、まさにその典型であろう。当初、300人超の企業を対象に一挙に400万人に上る社会保険適用拡大をするという意気込みだったが、党内で改正法案提出に慎重論者が多く、見送り説が有力だった。そこで、300人超の企業でも、対象者は月収9万8000円以上とする案が浮上し、加入者は10万人に激減することに落ち着く様子となったが、最終的には「16年4月施行を目処とし、対象者は従業員501人以上企業に勤める年収94万円以上の短時間労働者(週20時間以上)に固まった」ようだが、確定ではない。
300人超が500人超と縮小した替わりに、月収は9.8万円から7.8万円に下がった結果、対象者数は45万人に膨れ上がった。加えて施行3年以内に対象拡大を法案に明記するという。企業規模を問わず週20時間以上のパートを集計すると約370万人となり、保険料負担は総額で5400億円に達する。45万人に絞り、負担額は850億円程度に圧縮されるというがこれで納得が得られるかは、保証の限りではない。
07年に当時の自民党政権が示した年金一元化法案は、対象パートについて①週20時間以上②賃金9.8万円以上③勤務期間が1年以上を対象としていたが、従業員のパート化比率が9割に達し、その大半が被保険者基準に該当する外食産業の業界団体である日本フードサービス協会など使用者から猛反対を受け、廃案となってしまった。同協会で実施したパートへのアンケートでは71.2%が反対という衝撃的な結果も出た。
年金制度の先行き不安も、混乱に拍車をかけているのは間違いない。現行では、確定拠出・確定給付が命脈を保っているが、それも給付年齢の引上げなどによる綱渡り状態によってやっとのこと。保険料だけふんだくって給付は保証の限りではない、という状況だから、こぞって反対する気持ちは理解できる。財政改革の解決手段をパートという弱者に当てること自体がそもそも間違いとの声もある。