【主張】パート法改正は五里霧中状態に
07年に施行された改正パート労働法の柱は、通常労働者と同視すべきパート労働者の差別禁止とそれ以外のパートに対する均衡処遇だった。ところがこれには、大穴が存在し、現在パート法改正を検討している労働政策審議会雇用均等分科会では、労使の対立が激しく、論議の進捗は危ぶまれているようだ(本紙4月9日号1面参照)。
既に本紙でも報道しているが、法8条に規定する通常労働者と同視すべきパートについては、賃金、教育訓練、福利厚生その他すべての待遇について、「短時間労働者であることを理由」とした差別的取扱いを禁止した。この「同視すべき」要件は、非常に厳しく、①職務の内容(業務内容および業務に伴う責任)②人材活用の仕組み(雇用終了までの全雇用期間を通じた人事異動の有無および範囲)③契約期間(無期契約または反復更新され無期と同視すべき有期契約)のすべてについて、通常労働者と比較して判断されることになっている。
厚生労働省が調べたところ、要件を満たすパートはわずか1.3%に過ぎず、本紙もこれでは画餅同然と批判したところである。分科会では労働側が実質的な待遇改善には繋がらないから、「3要件」は廃止すべきと噛みついた。
一方の使用者側は、真っ向から反対し、3要件は、これまでの労使慣行を踏まえて設定したもので、対象割合が少ないのは、現行法施行後各社が社内規定、労務管理を見直した結果、と反論しているがやや苦しい主張だ。賃金(9条)、教育訓練(10条)、福利厚生施設(11条)について、通常労働者との均衡処遇を努力義務としているが、こちらは企業の本気度も高く、ひいき目にみると改正法に対する企業努力は否定できない。
「8条違反の法律行為は無効となり、事実行為についても、不法行為責任を問うことが可能とされる」(荒木尚志「労働法」)と手厚い保護下に置かれているものの、一握りのパートだけの恩恵では、労働側の怒りも理解できる。とはいえ、1面報道どおりの状態では、来年の通常国会に改正案を上程する目処は立たず目下、五里霧中の状態だ。