【主張】管理職は短命というがあなたは
5月24日付毎日新聞夕刊をご覧になった愛読者の中には、少なからずショックを受けられた方もいるのではなかろうか。北里大の和田耕治講師(公衆衛生学)らが英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルに発表した論文がそれで、かくいう小欄も「管理職は短命」という見出しに驚かされた。
人口動態調査や国勢調査をもとに、職種を①専門・技術職②管理職③事務、販売、労務職などのその他の職種に分類し、それぞれの死亡率(10万人当たりの死亡者数)を分析したところ、3グループともに80年以降低下傾向だったのに対し、00年には管理職の死亡率が95年の1.6倍、専門・技術職も1.4倍に跳ね上がり、その他の職種の平均を上回った。05年には後者は下降に転じたが、管理職は高水準を辿ったままという。
肺・大腸がん、自殺が三大死因。和田講師は、管理職は肥満や飲酒、運動不足が多く、多忙を理由に医療機関に行かない、診断遅れも背景にあるのではないか、と指摘しているが、「多忙」はともかく思い当たる節はある。08年に導入されたゆとり教育世代は、今年で5年目を迎え、「自主性を重んじる」「個性を発揮させる」という教育方針が徹底化された結果、勘違いしている新入社員が増加し、管理職の指示に従わない輩が増えているらしい。
加えて、日本経団連がまとめた「ミドルマネジャー」に関する実態調査によると、ビジネスの複雑・高度化、組織のフラット化、短期的な業績・結果志向の強まりなどによって、本来の管理業務が果たせない、と悩んでいる管理職が増加しているともいう(本紙6月4日1面参照)。
自問自答の末、結論が出せないで、病に侵される管理職が増加したことは否定できまい。先の報告では自殺は、その他の職種が1.4倍増に対し、管理職は2.7倍増、専門・技術職も2.3倍増という。かつての植木等さん主演「サラリーマンは気楽な稼業」シリーズがなつかしい。統計にいちいち神経質になるのもどうかと思うが、気になる。何せ導き出された結論が「短命」というのだから。