【主張】施行以来労基法違反の新聞業界
立法、行政、司法に次ぐ第四の勢力、社会の木鐸(ぼくたく=世人を覚醒させ、教えを導く人)と自認する一般紙業界で労働基準法施行以来の違法行為が放置されたまま、というのはいかがなものか。もっとも、あくまで「自認」であって、世間は閉鎖的な記者クラブに頼り切った新聞紙面に飽き飽きしており、木鐸なんぞとんでもないこと、というのが本音。実際に全国紙は大半購入しているが、内容たるや五十歩百歩。外電は地元紙頼り、国内は記者クラブからというのでは、独自の紙面構成ができるわけがない。
厚生労働省労働基準局編「労働基準法解釈総覧」なるものから孫引きしてみよう。
問 多くの新聞販売店は配達部数に応じ、配達人に報酬を与えているのであって、この販売店と配達人との関係は単なる請負関係であって、労働関係はなく従って労働者でないとみるを適当と考えるが如何。
答 配達部数に応じて報酬を与えているのは、単に賃金の支払い形態が請負制となっているだけであって、一般に販売店と配達人との間には、使用従属関係が存在し、配達人も本法の労働者である場合が通例である(昭22・11・27基発第400号)。
ちなみに労働基準法が公布されたのは、昭和22年。前記通達は7カ月と20日後に出されたもの。新聞事業本社ではなく、販売店となっているが、両者は密接不可分の関係にある。一般新聞社が65年間という長きにわたって、実質使用者責任を放置し労基法違反を続けているが、基準行政がこれにメスを入れたという話も聞かない。
配達人が、労働者である以上、労働時間関係はもとより年次有給休暇の付与など一切が一般労働者と同じに保護されなくてはならないわけだ。毎月1回の新聞休刊日は、月極め契約による「毎日配達」の約定を「配達人の健康保持」というきれいごとで御破算にし実施されたが、それで毎週1日あるいは4週4日の法定休日が確保されているとは到底思えない。年休付与など論外のことと推察できる。木鐸を自認なさるのは、身辺整理されてからではいかが?