【主張】求職支援制度の周知不足に異議
厚生労働省では、雇用保険を受給できない求職者に対して、職業訓練によるスキルアップを通じ、早期就職をめざすため、「求職支援制度」を設けている。このほど平成23年度の同制度による就職状況をまとめた。23年度といっても24年1月末に終了した訓練の3カ月後における速報値だから、全体像を示しているわけではない。
訓練にはパソコン操作などの基礎コースと介護支援などの実践コースとがあり、期間は1コース3~6カ月で今回約5万人が受講した。で、肝心の就職率だが、前者が69.7%、後者が71.8%を示し、この種の助成制度では、上々の達成率と感じたが、周知不足という声が上がっている。
というのは、23年度予算として785億円を計上し、15万人の利用を想定したものの3分の1に終わったからだ。しかし、同年度の開始は10月からと半年も経過してからであり、想定が甘かったというのは酷ではないか。周知不足という非難にも異議がある。
同制度は一昨年7月、国の緊急人材育成事業として始まったもの。訓練期間中、単身者は月10万円、扶養家族のある者は同12万円が支給されることから、人気を集め1年間で総額237億円が投じられた。ただ、ご多分に漏れず不正受給者が続出し、8割以上の出席者には給付金を支給していたが、これを廃止し、1度でも訓練を欠席(遅刻・欠課・早退を含む)したり、ハローワークの就職支援を拒否すると、給付金を支給しないばかりか、繰り返したときは、訓練期間の初日に遡って給付金の返還命令の対象とするという締付けを行った。返還命令が下されると、他の不正受給と同じく「最大3倍返し」となるから、不埒な輩が二の足を踏んだ結果、ともいえそう。というか、緊急育成事業だから、応募者が少なかったことは、むしろ喜ばしいことではないか。予算が付いたら何が何でも完全消化という考えに立つ方がおかしい。
緊急対策とはいえ、雇用保険料を一部だけ納付した者やまったく納付していない者を助成対象とする制度自体、疑問を感じる労使もあろう。今後の動向を見守りたい。