【主張】中抜け時間の扱いを再考しよう
別府や湯布院など名湯を管轄する大分労働局は、このほど旅館・ホテル業を対象に集団指導を実施した。労務管理・労働条件の後進性で知られる業界だけに事業主や労務管理責任者を集め、県内4カ所で開催した「基本的な労働時間管理説明会」は、まさに基本的な質問が集中し、盛会だったようだ(本紙7月23日3面参照)。
なかでも業界特有の「中抜け時間」の扱いに苦慮しているもよう。中抜けとは、文字どおり「業務量が減る午前と午後の間の時間帯に付与する長時間の休憩」を指す。極端にいえば朝6時から午前10時まで勤務し、その後休憩に入って午後4時から午後8時まで、また働くという形式。その間、実に6時間もの「中抜け」が生じる。働いた時間は8時間だから、法定労働時間内に収まっているものの、中抜け時間が、完全に労働から解放された「休憩」であるかどうかの判断は難しい。
中抜けの多い業界は、旅館・ホテル業のほか、小規模の病院、飲食店など、かなりあるようだが、労働基準法での扱いは素っ気ない。労働基準法コンメンタールでは「休憩時間を長くすれば、労働者にいたずらに長時間事業場に拘束しておくこととなり、望ましいことではないだろう」と合法的と認めている。休憩時間の最長限度について定めているのは、「自動車運転者の労働時間等の改善基準」(平元・労働省告示第7号)だけ。
「労働時間は、拘束時間から休憩時間(仮眠時間を含む)を差し引いたものとする。この場合において、事業場外における仮眠時間を除く休憩時間は『3時間』を超えてはならないものとする」がそれだ。
ただ、これとて、あらかじめ運行計画により、3時間を超える休憩時間が定められている場合などは、この限りではない、となまくらな定めだ。
大分労働局では、午前と午後の労働時間を明示した労働条件通知書の作成・交付を指導したが当然の方向性だ。中抜け中に業務命令を出せば、当然時間外労働となるが、この扱いもあいまいらしい。当局は「中抜け」の異端児扱いを正すよう動いてほしい。