【主張】奉仕心頼りの介護施設でいいか

2012.10.08 【主張】
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 労多くして利少なし――これにぴったり当てはまるのが介護職員の実態だと思う。

 介護労働安定センターがまとめた「平成23年度介護労働実態調査」(本紙9月3日号8・9面参照)によると、月給者について年齢階級別にみると、20~25歳未満は17万8566円となっている。これに対し、本紙が行った平成25年高卒求人初任給集計結果によると、平均で「17万円台」になっている(8月20日号1面参照)。高卒就職予定者の集計協力校が最も賃金水準の高い都内とはいえ、イコール企業内最低賃金である。

 処遇改善交付金の恩恵があってのことという解説を読むと、介護労働者の労働条件の改善はまさに喫緊の課題といっていい。介護労働に従事する若者は「奉仕心」に富み、処遇よりボランティアに重きを置いているように感じる。3年前まで90歳代の老親が介護施設にお世話になっていた小欄は、介護労働者の働き振りをみて実感した。既に2人が身罷り、現在は同居する95歳の義母が週3日デイサービスでお世話になっているが、よく親身になって世話ができるものだと感心しきり。

 前記調査によると、介護職員の離職率は16.1%で前年度比1.7ポイント減となり、2年振りに改善されたものの、従業員の過不足状況は、「大いに不足」「不足」「やや不足」の合計53.1%で、前年度より3ポイント近く悪化した。労働に見合う報酬なら納得がいくが、かりに「施設内で恋愛し、共働きを希望しても」かなわず、こどもを授かると、まず生活苦から離職を覚悟しなければならないそうだ。さような実態を放置している為政者に対し、高齢社会の裏方に対する認識の欠如を問いたい。

 本紙9月3日号3面によると、社会福祉施設に対する埼玉労働局の監督結果では、7割の事業場で労働基準法違反などがみつかり、中には月90時間も違法残業をさせていた施設があったという。きれいごとだけでは、ヒトを集めるのは限界がある。義母の施設でも休憩中にも目を離すことができず、労基法にいう労働から解放され、法定の休憩時間が取得できる職員は皆無に近いということである。

平成24年10月8日第2892号2面 掲載
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