【主張】巧妙な日本経団連の規制緩和策
平成16年1月1日に施行された改正労働基準法の柱の1つに「企画業務型裁量労働制の実施要件緩和」があった。なぜ登場したかといえば、経営側の「従来の制度は要件が厳し過ぎる、手続きが煩雑過ぎる」という批判に応えたもの。日本経済団体連合会は、2012年の規制改革要望を明らかにしたが、企画業務型裁量労働制についても、さらなる緩和を求めている(関連記事=本紙10月22日付1面参照)。16年改正では、企画型裁量制は、独自に事業活動を行っている支社・支店等も対象とすることに中心軸が置かれた。労使委員会についても①選任要件②議決要件③設置届の廃止④決議の有効期間の延長⑤労働基準監督署長への報告などが緩和された。経団連では、この労基署長の報告にさらなる緩和を求めているわけだ。
改正前の報告は、4点あったが、このうち「労働者からの苦情の処理に関する措置の実施状況」と「労使委員会の開催状況」が削られ、現行では「対象労働者の労働時間の状況」と「健康・福祉確保措置の実施状況」だけとなり、1年ごとに1回の定期報告を届けなければならないとされている。
改正当初は6カ月以内ごとに1回となっていたから、大幅に緩和された。これでも煩雑と経団連はいうが、以下に紹介するようにスジは通っているように思える。
「企業実務の実態としては、労使委員会での決議の内容は事業場ごとではなく、企業内で統一的なものとすることが一般的である。そのため、事業場ごとの届出が求められる現行の手続き規定は、とくに1つの労基署管内に多くの事業場がある企業にとって、実務上大きな負担となっており企業単位での一括届出とする方が効率的である」。
加えて、管理する労基署も一括届出と適切な監督行政の両立が可能とのアドバイス付きである。
07年に労働政策審議会が行った「改正労基法」の答申で、定期報告廃止を妥当とするお墨付きが出されている、と強気の要望に結び付いている手の内をみせているのも痛快といえそう。