【主張】パートの文書明示が追加された
労働基準法第15条第1項には、労働条件の文書明示が規定されているが、パート労働法には、これに加えて「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」について、文書明示が義務化され、違反した場合には10万円の過料となる。
労基法に規定する文書明示は現在、「契約期間」「就業の場所・従事すべき業務の内容」「労働時間に関する事項」「賃金」「退職に関する事項」の5項目だが、来年4月1日から新たに有期労働者に対して、更新の基準に関する文書明示が加わることになった(労基法違反は30万円以下の罰金)。
基準の内容は、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(平成15年厚生労働省告示第357号)の施行通達(平15・10・22基発第1022001号)に示されたものと同一になる。
したがって、通達(平24・10・26基発1026第2号)によれば、「更新の有無」については次のようになると考えられる。
a 自動的に更新する
b 更新する場合があり得る
c 契約の更新はしない「契約更新の判断基準」としてはこうだ。
a 契約期間満了時の業務量により判断する
b 労働者の勤務成績、態度により判断する
c 労働者の能力により判断する
d 会社の経営状況により判断する
e 従事している業務の進捗状況により判断する
形式的には、例示された内容を明示すれば足りるが、孫請けはご法度だ。例えば、更新の有無にある「自動的に更新する」などは、常識的には考えられない。自動更新すれば事実上、雇止めができなくなる。解雇権濫用法理の洗礼を受けることになるわけだ。
もちろん、内容も合理的な理由が要求され、社会通念上相当性がない「文書」は否定されよう。労働条件の明示について、当該パートに文書を手交しなければいけないか、という質問があった。内容が他社に漏れるから、というのがその理由。短慮に過ぎるとしかいえない。