【主張】新型インフルエンザと企業責任

2012.12.24 【主張】
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 新型インフルエンザが流行の兆しをみせている。幼稚園や小学校では、学級閉鎖も出ているが、企業で蔓延した場合には、どのような対応が必要となるか、基本的な考えを明らかにしたい。本紙では、前回(平成21年)の流行時に安西愈弁護士に特別寄稿をお願いしている。以下はその要約だが、本稿は厚生労働省が発出した「新型インフルエンザに関連して労働者を休業させる場合の労働基準法上の問題に関するQ&A」に基づいて解説されている。労基法第26条に規定する使用者の責めによる休業で、休業手当の支給を要するか否か、の判断といっていい。

 1、従業員自身が罹患した場合については、感染症法やガイドラインによる知事の措置として、休業や自宅待機が求められたとき、雇用上の取扱いは一般的流行のものと同様に通常の病気欠勤となる。

 2、当該罹患従業員の2メートル以内のいわゆる濃厚接触者についても一般公衆への蔓延防止のため、自宅待機措置が求められ、この要請に応じて自宅待機させる場合は、使用者の帰責とはいえないので、休業手当は不要となる。

 3、上記以外の罹患者や濃厚接触者でない従業員を、たとえ従業員の中に感染者が出たことによる風評上の信用保持や社会的責任、地域の感染防止への協力という立場であっても、店舗等を休業や休止にして従業員を自宅待機等させることは、前記の「不可抗力」等には該当せず、知事等の勧告に基づくものではないので、企業の経営責任に基づく自主的判断による休業となり、休業手当の支給が必要。

 4、1および2の場合、従業員が年次有給休暇を請求した場合または使用者が従業員に年休取得を勧め、従業員がそれに応じて(強制はできない)年休を取得した場合は、年休による休業となる。

 5、1および2の場合、労基法上の休業手当の支払い義務はないが、企業として有給としたり、見舞金等を支払うことは、企業の自主的労務管理の対応である。

 厚生労働省によると、この判断を現在も踏襲しているという。休業手当論議が杞憂に終わることを祈るばかりだ。

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平成24年12月24日第2902号2面 掲載
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