【主張】避け難い求人賃金引上げ
厚生労働省は、人手不足の深刻化で中小・零細企業における働き方改革が困難となる可能性があると懸念を強めている。4月から外国人労働者の受入れが始まったとはいえ、すぐに戦力化できるかは不透明である。ここまで労働力需給が逼迫してくると、求人賃金をはじめとする労働条件の引上げが避けられない状況となってきた。デフレ脱却の観点からも、企業は今こそ躊躇せず人件費コストの拡大に力を尽くすべきである。
わが国は、総人口が減少している一方で、雇用者数や就業率は上昇を続けている。今年1月の雇用者数をみると、5953万人で、前年同月比73万人増加し、73カ月連続の上昇となった。15歳以上の就業率は59.7%で、前年同月比0.6ポイント拡大した。
人口減少局面にあっても景気次第では、労働市場への新規参入者が増加し、雇用者数が拡大するのは明白といえるが、いつまでもこの傾向が続くとは限らない。企業としては、これまで抑え気味だった賃金・労務コストを思い切って拡大し、まずは有能な日本人労働者の採用に積極的に挑むべきである。
外国人労働者の受入れにはそれなりに期待が持てるが、どこまで戦力となり得るかは分からない。業務能力の育成以外にも日本語や生活面などのきめ細かな支援が必要になる。外国人労働者の採用といっても様ざまな配慮が求められ、簡単ではない。
一部大手では、今期賃上げ交渉において、要求額を3000円も上回る1万円超の回答をした企業があった。業種によっては、初任給引上げ競争が始まっているとの見方もある。積極的に労働環境の改善を図らないと、働き方改革が実行できないばかりか事業継続そのものが危うくなるとの判断だろう。
厚労省では、職業相談と求人開拓部門が一体となった採用サービスに取り組んできたが、人手不足緩和には至っていない。企業は、業務内容の分かりやすい紹介と各種求人条件の緩和に心掛けるとともに、賃金水準の大幅引き上げで危機的状況に対処する外はない。雇用者数全体のさらなる拡大にもつながる。