魅力ある職場づくりへ助言/本那社会保険労務士事務所 本那 令子
社会保険労務士として、顧客である事業主から就業規則の見直しを依頼されることは多いが、その目的がここ数年で変わってきているように思う。近頃は「古い内容の就業規則を使うことで労働環境を整える意識がないブラック企業のように思われるのは嫌だ」という事業主が増えてきた。
ブラック企業、ブラックバイトという言葉が2013年に流行した。人件費コストの低い非正規労働者を主要な働き手としてきたサービス業において、学生アルバイトが長時間労働を強いられ、過重なノルマを押し付けられるなど劣悪な労働環境にあることが広く報道され、映画にもなった。
政府が一億総活躍をめざすなか、若者が就労しやすい環境を整える法律が次々と改正、施行されている。
15年10月に若者雇用促進法が施行され、今年3月から新卒者を募集する企業は離職者数や勤続年数等の情報提供を義務付けられた。ハローワークは労働関係法令違反の事業主に対しては新卒者の求人を受理しなくても良いことになった。
企業としては、ホワイト企業をめざして就業規則の整備や人事制度の構築を行う必要に迫られているといえるし、社会保険労務士はそれらのニーズに対応したサービスを提供することでお手伝いをする役割がある。
一方で、規程や制度以外に、若者が働くことに魅力が感じられる職場づくりが不可欠である。出世を望まない若者が増えたという新聞記事を読んだ。私自身も顧客から従業員に昇進を断られたという相談を受けたことがあり、断られた理由は「管理職になったら人間関係のストレスを抱えきれない。どうしても管理職を引き受けなくてはならないのなら退職する」というものであった。人間が多くいれば全員が出世をめざすものでもないが、長い職業生活の初めから仕事はそこそこでいいと割り切られてしまうのは大きな損失であると思う。
働き方改革により、若者が使い捨てられることはなくなると思われる。長時間労働も是正されていくだろう。待遇の良さは雇用の安定につながるが、働くことそのものに希望を持ってもらうためのひと工夫が企業には必要なのかもしれないし、社会保険労務士として適切なアドバイスができるよう努めたいと思っている。
本那社会保険労務士事務所 本那 令子【徳島】
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