農作業中の労災に対処/いぶし社会保険労務士事務所 所長 飯伏 純也

2012.02.06 【社労士プラザ】
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 毎朝目を通す地元紙の片隅で、農作業中のトラクター転倒または耕運機に挟まれての死亡事故が報道されているのに目が留まったのは、8年ほど前のことである。社会保険労務士として一般企業の安全管理等に携わってはいるものの、農業者に対する視点には欠けていた。

 農水省の調査によると、平成19年における全国の農作業での死亡事故は397件。労働者1000人当たりの年間事故件数を表す千人率をみると、比較的高いといわれる建設業の8人に対して、農業においては14人、畜産にいたっては27人と発生率が極めて高い。また、昭和46年の死亡者数を100とみた平成19年の数値は建設業で20、農業では109である。これは異常といわざるを得ない。

 鹿児島県は北海道、長野と並び農業三大県と呼ばれ、農業従事者も多い。そのような中、毎年約20人が農作業中の事故で亡くなっており、特に昨年は6月だけでも4人が亡くなった。ハインリッヒの法則で考えると、ケガをした人を含めれば年間600人近くが被災していると思われる。

 昭和40年の労災保険法改正により農業従事者も特別加入団体を通じ労災保険へ加入することが可能になっており、鹿児島県内JAの中には特別加入団体が10団体ほど設置されている。しかし、そのほとんどが機能しておらず加入率も0.3%止まりである。特別加入団体の多くが農業機械銀行等のオペレーターを対象に設置されていたにすぎず、一般農家を加入対象にするという視点がなく、また内部にしっかりとした事務処理体制も確立されていないことが理由に挙げられる。

 そこで、県JA中央会の中に特別加入団体を立ち上げ、どこのJAに属する農業従事者でも加入できるという体制の必要性を強く感じ、中央会と協議を重ねた結果、平成22年10月、鹿児島県JA中央会に県内全域を範囲とする「鹿児島県農協労働保険事務組合」を立ち上げることができた。

 グローバル化の中で、日本の農業の国際競争力強化が叫ばれる。集落営農組織あるいは農業法人化による営農形態など農業の近代化を進めていくためには、そこで働く人が安心して働ける労働環境の構築が絶対条件である。私たち社会保険労務士がさらに貢献できればと思うところである。

いぶし社会保険労務士事務所 所長 飯伏 純也【鹿児島】

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平成24年2月6日第2859号10面 掲載
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