社労士会ADRの利用促進/一宮労務管理センター 宮田 雅史

2012.02.27 【社労士プラザ】
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 労働関係調整法は「労働争議」について、集団的当事者間における「労働関係に関する主張」の不一致により争議行為が発生する可能性がある状態を含む概念として定義している。ここでいう主張とは、労働契約等に基づく権利義務の存否や内容に関する主張(権利紛争)のみならず、当事者間合意による新たな労働条件の形成をめざしての主張(利益紛争)をも含む。

 また、個別労働関係上の紛争解決制度として、訴訟手続きのほか、労働審判、労働局のあっせん等があるが、いずれも権利紛争を手続き対象としており、利益紛争に関しては、個別契約レベルにおいて特段の紛争処理制度は用意されていない。

 社労士会労働紛争解決センターは、個別紛争を対象とするADR(裁判外紛争解決手続き)機関であるが、対象とする紛争の概念は必ずしも明確に意識されていない。そのため、個別の利益紛争を取り扱うことを明確にすれば、紛争処理システムの隙間を埋める有用な社会的存在であることをアピールできるのではないか。労働条件に関する主張が一致せず紛争が発生する恐れがある場合、その時点での利用を検討してもらうのである。利益紛争への関与に注力することで、利用者にとって、社労士会ADRを選択する意義が分かりやすいものとなる。

 解決に向けた視点は、社労士法にいう「企業の発展と労働者等の福祉の向上」にある。紛争の一方当事者である労働者は当該労働者一個人でなく、その家族も含めた労働者「等」であり、仕事と生活の調和も指標となる。労使の合意形成に向けての手法は利益調整的なものとなり、ADR法にいう「当事者の自主的な解決の努力を尊重しつつ」も、社労士が有する専門的知見を生かし、紛争の実情に即した迅速な解決を図ることが基本理念となる。

 労使コミュニケーションの欠如が、紛争を発生させる。とりわけ小規模事業場で企業内への紛争処理機関の設置が困難であれば、社労士会ADRを、紛争を生じさせないためのコミュニケーションの場とし、また紛争の拡大を防止するための準企業内紛争処理機関として位置付けるのである。社労士会ADRは、労使の権利利益の適切な実現に資することができるはずである。

一宮労務管理センター 宮田 雅史【愛知】

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平成24年2月27日第2862号10面 掲載
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