モデル就業規則には危険も/社会保険労務士 金子事務所 金子 稔

2012.05.07 【社労士プラザ】
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 当事務所では、労働問題に関する相談を受けているが、最近は、従業員がインターネットを使って労働問題について調べ、社長に対して労働条件等について意見を言う、という話をよく聞くようになった。具体的には、「こんな判例があるのに、この取扱いはおかしくないか」、「こんな取扱いは法律に違反している」などの意見である。もっともらしい意見に聞こえるが、「判例がある」といっても、大企業だから出た判決であって、中小企業には当てはまらない、ということがある。「法律違反」についても、かなり自分に有利な解釈をしていて、とても適切とはいえないものが多い。つまり、判例や違法という言葉が入っているからといって焦ってはいけない。

 さらに、従業員が「知り合いの弁護士が、その取扱いはおかしいと言っている」と主張してきたケースがあった。その弁護士に発言の真偽を確認するため弁護士名を聞き出そうとすると、従業員は、インターネットで都合のいい情報をみつけたので、権威付けのために「弁護士」という単語を使ったことを認めた。従業員の主張が正しいか否かを判断し、トラブルが発生しないように適切に対応するには、経営者自身が労働問題の知識を付けるか、労働問題に詳しい社会保険労務士などから、アドバイスを受けられるようにしておくことが必要である。

 就業規則を整備することも重要である。今でも就業規則なんてひな形で十分、という経営者は多い。しかし、ひな形には労働法規の基準を大幅に上回る待遇を約束しているものが多数ある。そして、経営者が十分に内容を理解していないため、インターネットで知識を得た従業員に就業規則どおりの待遇を要求され、思わぬトラブルが発生することがある。労働契約法には「使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする」とある。つまり、就業規則と実態が異なると、「契約違反」として会社が不利な判断を受けることがあるので注意が必要である。

 当事務所をはじめとする社会保険労務士事務所の多くでは、就業規則の診断を行い、トラブルが発生しそうな規定について指摘をしている。

社会保険労務士 金子事務所 金子 稔【東京】

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平成24年5月7日第2871号10面 掲載
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