社内に労使協議機関を/柴山社会保険労務士事務所 柴山 玄
会社勤めをしていた頃、企業内労働組合の副書記長の役務に就いた経験がある。労務に関する知識が皆無だったほか、労働組合は過激的行動をとる団体で、会社から不利益な扱いを受けると勝手なイメージを持っていたため、就任を頼まれた時は正直嫌だった。
仕事も忙しかったことから組合活動はほとんど行わなかったが、業界の横のつながりで結成されている労働組合団体の講習会に参加したところ、労働組合への見方は変わった。
講習では、メンタルヘルス、いじめ、セクハラへの対処、さらには企業イメージアップ、業務効率化の取組み方を真摯に説明していたのである。どれも企業では問題となり得ることではないか。自身が心配していた経営陣と労働者の強硬対決をイメージさせる内容はなく、モチベーション向上や働きやすい環境づくりによって生産性を高め、売上げを伸ばしていくとともに、労働条件を向上させようではないかというものだった。素直にこのような労働組合なら労使間にとってあった方が良いのではないかと感じた。
他にも労働組合の重要性を感じた出来事はある。それは「名ばかり管理職」問題である。問題の背景は「会社全体に占めるフランチャイズ(FC)店の収益の貢献度が高いこと」「上納金をFC店の利益額ではなく売上額に一定の率を乗じて徴収していたこと」だった。
実際の事案では、FC店の薄利経営が常態化し、アルバイト、パートの人件費抑制により、FC店店長自らが時間外月100時間超で休日月3日という長時間労働を強いられ過労死寸前(症候性脳梗塞)に追い込まれた。この後、FC店店長の訴えをきっかけに労働組合が結成され、労使間のパイプが作られたことは有意義であると感じている。
私が考えるに、労使間には、労働組合とまではいかなくても経営陣が現場の声に耳を傾けてくれる体制つまり労使協議機関が必要ではないか。経営者がビジョンを作り、労働者が共有し団結する。そして現場に問題が生じれば話し合い、軌道修正していくことが企業の健全な成長につながるのではないのか。経営陣が従業員に有無も言わさぬ体制を作り、問題が起きても知らぬふりでは、現場に「ムリ」を生み、利益の根源を削るだけであると思う。
柴山社会保険労務士事務所 柴山 玄【北海道】