ささやかな国際貢献/社会保険労務士・行政書士 下川原事務所 下川原 篤史

2012.10.01 【社労士プラザ】
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 平成21年7月15日に公布された出入国管理及び難民認定法(入管法)の一部改正に伴い、外国人技能実習制度の枠組みが大幅に見直された。

 新たに「技能実習」の在留資格が創設されたほか、在留1年目より労働保険・社会保険の適用を受けることができることになった。これに伴い、労働関係法令や入管法令など、技能実習生の法的保護に必要な情報(法的保護情報)の講習実施が上陸基準省令で義務付けられた。

 講師を務めるのが「専門的な知識を有すると認められる者」である国や地方公共団体の職員、弁護士、行政書士のほか、我われ社会保険労務士である。昨年来2~3カ月に1回程度、都内の事業協同組合のインドネシア人技能実習生に対する法的保護講習講師を務めさせていただいているが、この仕事が最近の楽しみとなっている。講習のたびに向けられる彼らの真剣な眼差しに身の引き締まる思いがする。

 旧制度においては、生産活動時に事故に遭ったとしても、在留1年目は研修であり労働ではないという実態とかけ離れた論理によって労災補償の対象外となるなど、多くの問題点が指摘されてきた。

 制度を悪用する一部の問題企業の事例のみがマスコミを通じて大きく取り上げられたが、私がかかわってきた多くの技能実習生受入れ企業においては、住居費用の大部分を企業負担としたり、日本語の勉強時間を確保する配慮を示したり、帰国後の日系企業での面接に備え推薦状を持たせたりと、縁あって受け入れた技能実習生の生活や帰国後の自活のため、献身的に技能実習生に接している。

 技能実習生の多くも3年間という限られた機会を素直かつ懸命に頑張っている。帰国後も経営者や従業員との交流が続いている例も多い。こうした事例を数多くみているため、低賃金労働でこき使う悪しき制度といったステレオタイプの批判に私は与しない。

 新たな技能実習制度の枠組みのなかで、社会保険労務士が適正な制度の運営に資する専門家と位置付けられたことの意味は大きい。講習の講師にとどまらず、入国から帰国まで企業や技能実習生が頼りになる専門家として研鑽を重ねることが、社会保険労務士としての国際貢献となることを信じている。

社会保険労務士・行政書士 下川原事務所 下川原 篤史【東京】

平成24年10月1日第2891号10面 掲載
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