法令順守は自己研鑽から/堀内社会保険労務士事務所 所長 堀内 政徳
社労士法第1条の2の規定に、「法令及び実務に精通して、公正な立場で誠実に業務を行わなければならない」とある。
全国社会保険労務士会連合会発行の「社会保険労務士法詳解」では、「社労士業務に関する法律には、労働基準法や労働安全衛生法など、強行法規が多い。経営が苦しいからといって最低労働条件を下回る労働条件を設定することや、労働・社会保険の適用を不正に逃れたりすること等は許されないから、社労士は、労使に対して法の順守を求めなければならない」としている。
まさに、社労士に対してコンプライアンス(法令順守)の徹底を求めているわけである。
企業経営者の相談に応じていると、「入社後しばらくの間は、社会保険に加入させない」とか、「昼間、効率良く仕事をしない人間には、残業手当は付けない」などと聞くことがある。
一方で、従業員からも、「将来年金がもらえるかどうか分からないので、厚生年金には入りたくない」とか、「自分の都合で退職するが、失業給付が有利になるので、解雇扱いにしてほしい」など、とんでもない話が入ってくることがある。
さあ、あなたは、社労士として、どのように答えるのか。「法律で決まっているから従って下さい!」と、紋切型に言うのだろうか。しかし、それでも従わなかったらどうするのか。ここからが、社労士としての真価が問われるところである。
例えば、社会保険の未加入問題では病気や老後保障の観点から、あるいは従業員のモチベーションアップの方向から、また将来の訴訟リスクの話をするなど、様ざまな説明、説得の方法が考えられる。
その説明や説得の幅を広げ、さらに深めるためには、各種研修会や、自主的な勉強会への参加、参考図書の精読等を通して、貪欲に知識を吸収し、その成果を即、実務に生かす努力が求められよう。
疑問なきところに進歩なし――まさに、自己研鑽の蓄積が、クライアントの法令順守達成への第一歩であると思っている。さて、「私自身、今日は、どれだけクライアントを納得させる話ができたのか」、自問する日々でもある。
堀内社会保険労務士事務所 所長 堀内 政徳【石川】