企業風土と就業規則の関係/小町社会保険労務士事務所 小町 正人

2012.11.19 【社労士プラザ】
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 企業がその歴史のなかで培ってきた価値観や信念が行動様式として形成されていくものを、企業風土という。企業風土は良い面も悪い面も含めて発生し、やがて潜在的なものとなり、その企業独特のものとして育っていく。就業規則の作成や変更の際に、この企業風土が大きな壁となることがある。

 近時の就業規則は、企業側のリスクヘッジを主眼に論じられることが多い。私たちも最悪の場面を想定しつつ、リスクヘッジを最優先にしながら検討を重ねる。その結果、就業規則の存在が、良い企業風土を犠牲にしなければならないことがある。逆に就業規則の存在が、悪しき企業風土を変革する機能を持つこともある。この企業風土の良し悪しも、リスクヘッジの観点から考察すれば判断しやすいが、良い面も悪い面も共存しているのが実態だろう。

 労働契約法が制定されたことで、判例法理や学説によって解釈されてきた就業規則の規範的効力が、ある意味明確化された。企業内における就業規則の重要性が、明確な形で再確認されたといえる。これらを背景に、就業規則の存在は、企業風土と離れた形での規律をめざすうえで、企業側からの当然の要請なのかもしれない。

 しかし、企業の実態は、企業風土によって職場環境が創出されている企業風土依存型が少なくない。そのような企業は、就業規則の作成や変更を企業風土依存型から契約型への転換の時期として捉えればよいのか。逆に、現状の企業風土依存型を維持しつつ、リスクヘッジを犠牲にすべきなのか。

 一般的には、従業員数が多くなるにしたがって企業風土依存型から契約型へと移行する。当然のことながら、従業員の個の部分が薄められ、組織としての意識が高まってくる。しかし、これは企業風土が薄まっていくということではない。むしろ企業風土は、組織化の中でも形成され続けていくと考える。

 就業規則はリスクヘッジをベースに検討すべきことは当然だが、その中で企業風土を多角的に考察し、良いものについては、いかに規定と共存させるかといった検討が必要だと考える。それは、企業があるべき姿を確認していくことになるのかもしれない。

小町社会保険労務士事務所 小町 正人【東京】

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平成24年11月19日第2897号10面 掲載
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