【今週の労務書】『非正社員改革 同一労働同一賃金によって格差はなくならない』
2019.05.18
【書評】
立法介入の必要性問う
非正社員の雇用の不安定性や低処遇に関し、著者は「二重の意味で私的自治の範疇に属する事象であった」と指摘する。
二重の意味とは、第一に正社員との格差が日本型雇用システムに内包され、そのシステムが元来、労使により自主的に形成されてきたこと、第二に非正社員の地位が、契約自由の範囲内で生じていることを指す。これら二重の自主性を尊重せず、法が介入するのは望ましくない――本書ではその主張の裏付けが、様ざまな角度から行われる。
いかに改革すべきかの検討は、本書の目的とされていない。むしろ著者は、現在の格差問題は時限的なものに過ぎないと認識すべき、と諭す。第4次産業革命で生じる新たな格差問題(デジタルデバイド)にこそ、目を向けるべき必要があるという。
(大内伸哉著、中央経済社刊、TEL:03-3293-3381、2500円+税)
令和元年5月20日第3209号16面 掲載