【人材ビジネス交差点】事業転換意欲の向上施策を/株式会社パートナー 取締役社長 矢幡 善郎
派遣会社の経営に携わっている者として、派遣業界の今後について提言をしたいと思う。
今まで、127人の男性派遣社員の披露宴に主賓として出席した。通常、派遣会社の幹部は内勤スタッフの披露宴には出席するが、派遣スタッフのそれにはほとんど出ないらしい。披露宴では主賓の挨拶をよく頼まれるが、主賓ということで会社紹介などがある。そこで新郎が派遣会社の社員と分かると、新婦側の列席者の顔に「うん?」の文字が浮かぶ。そう、これが派遣業界で働く者への世間の評価なのである。
私は、結婚が決まった社員に「相手の親御さんに、職業で何かいわれるか」と尋ねる。そうすると「将来を少し、心配されます」と返ってくる。彼は、間違いなく真面目なエンジニアで正社員でもあるのだが、世間には不安定な生活を送る人と映るらしい。エンジニア派遣は、世間一般でいわれるような不安定な仕事ではないのだが、派遣という働き方に対して、漠然と不安を覚えるようだ。この漠然とした不安が何かを、当事者である我われも世間もうまく捉えていない。
法改正、雇用安定措置も漠然とした不安が課題であれば、混乱を生むだけだ。
就労上の制約(通勤、資質など)が多い人、組織貢献などと無縁でいたい人は従来の派遣就業で十分だろうし、様ざまな企業での就業経験を持って派遣先に転職したい人もいるわけで、いたずらに雇用安定を謳っても、それが恩恵になるとは限らない。
派遣労働者だけに焦点を当てるより、派遣会社に雇用主としてのポテンシャルを向上させるチャンスを与えるほうが派遣労働者には、メリットが多いような気がしてならない。
具体的には、派遣会社のスピンオフ事業(派遣以外の事業)や汎用的な技術、技能習得を支援する制度・機関を作り、事業転換意欲を高めてはどうか。海外オフショアで奪われた仕事を国の政策で取り返し、派遣会社がその担い手としてチャレンジしても良い。
派遣会社は自転車操業が実態で事業転換する余裕に乏しい。決して自助努力を怠るわけではないが、規制強化やバッシングでの淘汰ではなく、健全な競争を促す出口戦略を考えていくべきだ。
筆者:株式会社パートナー 取締役社長 矢幡 善郎