【主張】許せぬ働き方改革の実態

2019.06.13 【主張】
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 改正労働基準法の施行で働き方改革がスタートしたが、中小企業への適用や「同一労働同一賃金」の取組みが義務付けられるのは、令和2年4月からである。その意味では、働き方改革が本格化するのはこれからといえる。

 本紙報道(6月3日号1面)によると、取組みが本格化する前の現時点までに、働き方改革で生じた負担を下請に押し付ける大手企業が少なくないことが明らかになった。大手企業の労働環境改善が下請中小企業の犠牲の上に成り立っているとすれば、到底容認できない。政府は下請法違反などを厳しく取り締まるのは当然として、縮小するパイの取り合いとならざるを得ないデフレ経済を早く解消すべきである。

 厚生労働省はこのほど、労働基準監督署が下請企業を監督指導した際に、違法な長時間労働などの労基法違反が認められたケースにおいて、その背景に親事業者などによる極端な短納期発注や下請法違反が疑われる実例を示した。

 大手電機メーカーの下請としてソフトウェア開発を行っている関東圏の情報サービス企業では、従来1年であった開発期間が半年に短縮されたため、多数のシステム・エンジニアに月100時間を超える長時間労働が生じた。

 中国地方の陸上貨物運送企業では、荷主からの発注が納期直前であったため、月単位の運行計画に基づくドライバーの人員配置から逸脱し、複数の労働者に月100時間を超える長時間労働を強いられてしまった。

 大手企業において自社社員の長時間労働を是正したり、賃上げした結果、下請企業の社員にしわ寄せが及ぶなら欺瞞であり、それを「働き方改革」と称することはできない。厚労省では、下請法などの違反行為に対する指導を担当する公正取引委員会や中小企業庁への通報制度を強化し、中小企業が働き方改革に取り組みやすい環境づくりに力を入れるとした。

 働き方改革の本格化を前に取締り厳格化は当然だが、デフレ経済から長期にわたり脱却できない現状を考えると、大手企業としても厳しい立場にあるのは否定できない。

令和元年6月17日第3213号2面 掲載
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