【主張】パワハラ防止策で結果を
通常国会で、パワーハラスメント防止対策の義務化を含む女性活躍推進法等改正案が原案どおり成立した。事業主に対し、新たにパワハラ防止に向けた雇用管理上の措置義務(相談体制の整備など)を課し、併せて同措置の適切・有効な実施を図るための「指針」の根拠規定を整備している(6月17日号1面既報)。
問題は、今回の法改正が実効性ある防止対策となり得るかである。周知のとおり、男女雇用機会均等法第11条に基づくセクシュアルハラスメント防止指針においても計10項目にわたる防止対策を列挙し義務化しているが、都道府県労働局には依然多くのセクハラ相談が寄せられ、改善が進んでいるとはいい難い。
多発するハラスメント関連紛争をこのまま放置すると、今後さらに規制強化される可能性が高まる。企業側としては、今回の法改正を機にハラスメント全般にわたる防止対策に本腰を入れ、結果を出す必要がある。併せて生産性向上も期待できよう。
新しいパワハラ防止対策では、これから制定する指針において相談体制の整備をはじめとする各種対策の実施を企業に義務化する予定である。ただし、セクハラ防止対策の義務化と基本的に同様の枠組みとなっているため、すでに取り組んでいる大手企業などでは新たな態勢を整備する必要はなさそうだ。セクハラとパワハラあるいはマタニティーハラスメント対策を含めて一体的に運用することで効率的運用ができる。
注意すべきは、セクハラ防止対策の義務化による成果がそれほど出ていない点である。平成29年度の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)が受け付けた労働相談構成比で最多の約35%(約6800件)を占めるのが、セクハラ関連だった。マタハラ関連も約2500件に達する。
大きな原因として、法律に沿った対策実施義務を履行しない企業が少なくないことが指摘できる。たとえば、30年度に相談窓口を設置している企業は4割程度に留まった。とくに中堅・中小企業は、これを機にハラスメント全般にわたる防止対策に本気で取り組むべきである。