経営は楽をすること/よもぎた社会保険労務士事務所 所長 蓬田 信一
職員を雇用したにもかかわらず、いつまで経っても経営が楽にならない。そのように毎日感じていた。
東日本大震災により被災された企業の復興のお手伝いを1年間させていただく機会を得、その時に知り合った経営幹部に教えていただいた言葉が私の考え方を変えた。
「経営は楽をすること。どんどん大変になっているのであれば、それは経営ではない」。自分では考えたことのないことだった。仕事は自分でやった方が速い、教えるのが面倒。しかし、これではいつまで経っても組織とはいえず経営ではない。そこで、前職である生産管理の経験から、工場のようなシステムを活かした社会保険労務士事務所をめざすこととした。
まず取りかかったことは、「現状を把握すること」である。①誰が、どの仕事を、どのくらいの時間で作業したか? ②何が原因で仕事が停滞しているのか? この2つの調査により、自分自身が仕事を抱え込んでいるために仕事が停滞していることが分かった。自分では誰よりも頑張っているつもりであったが、自分自身がボトルネックであった。猛省し、所長しかできない仕事を減らし、職員のできる仕事を増やすことを決定した。
次に、職員がどのくらいのスキルを持っているかを把握するために、スキルマップを作成した。
事務所の職員が、できること、できないこと、教育できること、まだ一度もやったことのないことを一目で分かるようにした。想像以上にできる仕事が多いため、任せることにした。権限と責任を与え、困ったこと以外は報告なし。ただし、情報は事務所全体でウェブを利用して共有することとした。自分でするよりも評判が良く、順調である。
3番目に、生産管理の改善の方法で有名な「ECRSの原則」を用いて事務所内での作業改善を継続的に行うことにした。
その作業が、①なくせないか? ②一緒にできないか? ③順番を変えられないか? ④簡素化できないか? ①から順番に確認し、当てはまる部分を改善し、生産効率を上げる方法である。作業改善の結果、車の移動を減らした。その時間で他の仕事が可能となり、事務所の生産性も向上した。働いている職員も仕事が楽になった。交通事故の可能性も減った。実際に実行して、クレームはあるかと思っていたが、1件もなかった。成果物は持参するのが当然という固定概念が改善の邪魔をしていただけだ。
経営は楽をすること。勇気をもって一歩踏み出し、もっと経営を頑張りたい。
よもぎた社会保険労務士事務所 所長 蓬田 信一【福島】
【公式webサイトはこちら】
http://www.yomo-sr.com/