テレワークの活用に期待/神谷社会保険労務士事務所 代表 神谷 直美
少子高齢化による労働力人口の減少に伴い、女性・高齢者等の活用に向けた働き方の多様化、とりわけテレワーク(在宅勤務)が注目を集めている。
私自身、15年ほど前に出産・育児と仕事の両立をめざして苦闘していた時期があったが、当時はまだテレワークという考え方自体が一般的とはいえない状況にあった。私は幸いにも保育園の空きを確保できたが、周囲には保育施設を確保できず仕事を断念した人も何人かいたことを記憶している。
ICT(情報通信技術)が発達した現在、高速の通信網や利便性の高いコミュニケーションツールが普及してきた。メールやチャットなどの情報伝達ツールの高度化・多様化に加え、高いセキュリティーを備えたデータ共有サービスや、パソコンでも可能なテレビ会議システムなど、円滑なコミュニケーションを支える製品・サービスが充実し、自宅と職場との情報共有や適時適切な報連相が可能な環境が整ってきている。これにより、育児や介護、身体の事情等で通勤が困難でありながらも、仕事の意欲・能力が高い方々が活躍できる機会・可能性が拡大している。また企業にとっても、優秀な人財の継続確保、多様な価値観を持った社員の創意工夫の活用といったメリットがあるなど、労使双方にとって、テレワークは大きな効果をもたらす勤務形態として、今後も拡大していくものと考えられる。ただし課題はある。
1つは労務管理の問題、すなわちテレワークにおける勤務時間をどう定めるのか、また時間外労働も含め賃金はどう計算するのかといった問題である。職場勤務と同様に基準となる勤務時間を定める方法もあるが、社員の生活状況によっては、テレワークのメリットが損なわれるケースも考えられるため、「みなし労働時間」を労使協定で定めるなどの方法も含め、テレワーク導入の目的や対象社員の生活状況に照らして検討する必要がある。
2つ目は人事評価に関する課題である。日本でも成果に基づく評価の導入が進んではいるが、成果に至る過程や業務態度も評価軸としている企業が一般的である。在宅勤務者の業務態度をどう評価するのか、あるいは成果をストレートに評価する制度とするのかを検討する必要があろう。
神谷社会保険労務士事務所 代表 神谷 直美【東京】
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