【人材ビジネス交差点】雇用促進システムの構築を/㈱ワークサポート九州 代表取締役社長 野田 孝輝
私は、昭和55年に日本国有鉄道、いわゆる国鉄に採用され、社会人としてのスタートを切った。
当時は、行政改革の名の下に官公庁の合理化のうねりが動き出したところで、私のいた国鉄でもあっという間に分割民営化が実施された、まさに激動の時代だった。働いていた私たちは人生の岐路に立たされ、働く環境や雰囲気も一変した。想像もしていなかった現実を受け入れながらも、将来が見通せなくなった不安で、息苦しく重々しい日々が続いたのを憶えている。
そんななか、私は運良く現在のJRに移行でき、数年後にはJRの旅行事業に従事することができた。そこでの経験で、今でも大きな財産となっている「社会と企業の密接な関係、地域と企業の重要性や貢献の理解」という着想を得て、起業を考えるようになった。
その後、退職してやっとの思いで人材派遣業を起業し、4年が経過した。しかし、この業界を取り巻く環境は年ごとに厳しさを増しており、一部では雇用の悪化、非正規社員増の元凶とさえいわれることもある。
こうしたなか、平成21年5月には一般労働者派遣事業の許可基準が見直された。これは、私どものような中小・零細企業にとっては会社存続を危うくするかも知れないものだった。
「規制緩和」や「中小・零細企業に活力を」との言葉をよく耳にするが、このような制度改正は、かけ声とは異なったものと感じている。
こうしているうちにも円高を背景にした製造業の工場統廃合や、自治体の合併や予算削減などがあり、地方経済においては雇用の場が激減している。今こそ、派遣業や職業紹介業が奮起すると同時に、労働局との協力の下、求職者・求人者双方の生の声に耳を傾け、雇用の場の創出・確保に取り組む必要があるのではないだろうか。
「雇用促進」のかけ声だけにとどまらず、官民ともに具体的なアクションによって雇用促進のシステムを構築することが必要な時がきている。特に、民間企業である我われのような地域の派遣会社は、「小回りが利く」強みを生かして、両者の架け橋となることが大切である。そのためにも、行政においては、ぜひとも一層の支援を仰ぎたい。
筆者:㈱ワークサポート九州 代表取締役社長 野田 孝輝