【主張】高年法改正方針に疑問符
厚生労働省は、この秋に関係する審議会において高年齢者雇用安定法の大幅改正に着手するとしている(本紙8月26日号1面既報)。次期通常国会で70歳までの就労確保を企業の努力義務とする「第一段階」の法案成立をめざすとしている。「第二段階」の改正で、これを義務化する目論見である。
高齢社会において、70歳までの雇用の努力義務化(将来的な義務化)の方針は理解できるが、企業との雇用関係から離れた高齢フリーランスやボランティア活動への資金的支援は労働法制とは異質な分野といわざるを得ない。高年法とは切り離して検討する必要がある。
本紙報道では、企業と高齢者間の話合いなどに基づき、65歳以上の就労方法を7つの選択肢から選べる仕組みとすべきとしている。その7つとは、①定年廃止、②70歳までの定年延長、③継続雇用制度導入、④他の企業(子会社・関連会社以外の企業)への再就職、⑤個人とのフリーランス契約への資金提供、⑥個人の起業支援、⑦個人の社会貢献活動参加への資金提供――である。
このうち、「個人とのフリーランス契約への資金提供」と「個人の社会貢献活動参加への資金提供」の2つは労働法制と馴染まない分野といわざるを得ない。雇用関係から離脱した高齢者とのフリーランス契約(業務発注契約)を継続すること、同じく雇用関係から離脱した高齢者が所属するボランティア団体などへの資金的支援の努力義務化(将来的な義務化)を高年法に盛り込む必然性はない。
高年法は、いうまでもなく雇用関係にある高齢者を対象とした法律である。フリーランスやボランティアの支援を高年法に規定し、努力義務化(将来的な義務化)し企業を縛るのは無理がある。資金的余裕のある大手企業なら対応可能かもしれないが、中小零細企業にとっては到底飲めない選択肢である。
フリーランス支援などは、労働法制のなかで論じるのはなく、経済法分野で対応するのが筋ではないか。ベースとなっている政府方針がそもそも理解に欠けている。