「手痛い経験」通じ成長/澤井国際事務所 澤井 清治
社労士の事件は現場で起きている。開業18年、「手痛い経験」が多くあった。それも、自分の知識と力不足が原因なのだから仕方がない。通らなければならなかった道である。
労使紛争で労働側に取り込まれ委託解除となったこと。経営陣の派閥争いに巻き込まれ、身動きが取れなくなったこと。団体交渉で失敗したこと。あっせんで妥協してしまったこと。助成金の手続きに不備があり、獲得できなかったこと。
数え上げれば切りがない。その都度情けない自分と向き合って葛藤しながら、仕事を続けてきた。だからこそ今の自分があるのだと思う。
社労士法第1条の2(社労士の職責)の中に「業務に関する法令及び実務に精通」とあるとおり、社労士は知識・見識と実務能力が要求される仕事である。
一方、私は開業と同時にLEC東京リーガルマインドで講師業をやっている。多くの卒業生を出したが、私のモットーは実務の大切さを常に伝えることだ。せっかく取った資格を、自分や社会のために活かすことができれば、こんなに有意義なことはない。
さて、今私が最も危惧していることがある。それは「未払い残業代の問題」である。消費者金融の過払い利息問題が終息し、大量の弁護士を抱えた大型弁護士法人が次に向かうのはこの利権である。転職については売り手市場になっている、労働者は現在の会社にこだわる必要はない。だったら会社を退職して未払い残業代を手にしてから新たな転職先に向かうのも悪くない。
携帯電話やスマホの普及により事業場外での労働時間の算定が容易になり、「みなし労働時間制」の適用を否定する判例も多く出ている。多くの中小企業は賃金制度の見直しをせざるを得ないのではないか。まさに社労士の出番である。
顧問先の中でも、労使トラブルが多い会社とそうでない会社がある。その違いは何か。それは、経営者と社員の関係である。人は感情の生きものである。そのことを顧みず、システムや規則だけで社員をコントロールしようとすると、社員は反発する。感情的に受け入れ難いからだ。長い間みているが、労使のトラブルがない会社は、社長をはじめとする経営陣の人間性が豊かである。
中小企業の魅力とは、社長の人間的包容力抜きには形成できないと思う。
今年の秋から、給与計算についての講義を始める。給与の分野は、社労士と税理士の境目に位置するものだが、給与は会社の血液のようなものだ。社労士もしっかり勉強する必要があるだろう。私たち社労士の仕事は、現場で起きている。
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