【主張】許し難い大手の無法振り
広告代理店「電通」に昨年入社した24歳の女性社員が過労自殺した。月100時間を超す違法時間外と睡眠不足が、悲劇を生んでしまった。近年、大手のブラック企業化は、許しがたい状況に至っている。大手企業の多くの経営が、若者の違法長時間労働の集積で成り立っているとすれば、日本の持続的経済成長などあり得ない。法的規制を早急に強化して、一律に時間短縮を図る外ない。
最近書類送検された大手飲食チェーンのサトレストランシステムズ㈱も、大阪府の店舗において月111時間の違法時間外をさせていた。電通における労働時間管理の無法振りを目の当たりにすると、長時間労働は、繁閑の差が大きい接客・飲食業に限られたものではないことが分かる。その企業に浸み込んだ体質・風土や経営トップの思考に根本がある。
まして電通では、2000年にも大きく報道され社会問題となった過労自殺裁判があった。この時自殺したのも入社2年目の24歳男性で状況は同じである。裁判では、1億円を大きく超える損害賠償が支払われている。
労働者健康安全機構の調査をみると、女性の過労精神障害の6割は20~39歳で発症していた。自殺死亡時の平均年齢は31歳だが、半数は20歳代で占められる。若者のメンタルヘルス・ダメージが、いかに大きいか明白である。
若者が希望をもって気持ちよく働ける労働環境を作ることが、先輩である中高年世代の使命である。個々の企業は、経営トップはもちろんのこと、管理職層が一体となって職場風土の改善に取り組まなければ将来はない。
併せて、時間外上限規制を早急に設定すべきである。36協定の特別延長時間をみると、月100時間超の事業場が8%、80時間超では17%と2割近くに及ぶ。1年でみると1000時間超という事業場もあった。
36協定締結の際の時間外限度基準は、大臣告示から格上げしたうえで、改めて強力に周知徹底する必要があろう。
若者の過労自殺をこれ以上みたくない。実行すべき時が来ている。