議論深めパワハラ防ぐ/荒井社会保険労務士事務所 所長 荒井 真澄
先日、仕事の打合わせで新宿にある比較的席数の多い喫茶店に行った。店内はかなりの混み具合で、ようやく着席して注文した後、話に夢中になっていたが、気付くと30分しても何も出てこない。忙しく動き回る店員を呼んで確認すると、そのあと別の現場のチーフらしき女性がやって来て、最初にオーダーを取った店員が仕事を放棄して帰ってしまった、と強い口調で憤慨しながらも、私たちに謝っていた。
仕事を放棄した店員にはびっくりだが、遅れてしまった事情を正直に教えてくれたチーフにもびっくりである。その後、そのチーフから強い口調で語られた店員を非難する言葉と不機嫌さが、こちらにも何となく伝染したように思われ、いつもはおいしくいただいているコーヒーだが、最後まで何となく味気なく感じられた。何げない言葉でもその表現の仕方によっては、時に人を不安に、哀しい気持ちにさせるということを実感した次第である。
さて、2020年4月から(中小企業は2022年4月から)パワハラ防止法が施行となるのに合わせて、相談窓口の設置や発生後の再発防止策の実施などが新たに設定された。
こうした変化への対応もあり、弊所でも企業や団体からのハラスメントの研修やセミナー依頼が近年増えている。
受講者の方々の反応をみていると、ハラスメントの中でも、やはりパワーハラスメントへの関心が強いようにお見受けする。
中小企業で行われる上司の部下指導に関しては、経営者や管理職ご自身が受けた過去の教育の影響も大きいと思われ、過去の判例など、事例として取り上げる問題の言動に対しても、納得がいかないこともあるようである。
パワハラに関しては、厚生労働省から「職場におけるパワーハラスメントの3要素」やそれらを満たす「6類型」などの定義や考え方が示されている。それらを知ることはパワハラを学ぶ上での大前提だが、経営者や従業員一人ひとりが、パワハラのことについてお互いに議論を交わしながら、皆で理解し価値観を共有することが大切だと実感している。
中小企業のパワハラ対策では、従業員が少ない小規模事業所の経営者にとっては、必要性が低いように思われがちである。しかし業界によっては、古い体質そのものが問題になることもあると思う。新規採用が難しい昨今、会社のイメージアップのためにも、会社の枠を越えた業界や地域という単位でも対策を検討し、皆で予防する意識が大切なのだと考える。
荒井社会保険労務士事務所 所長 荒井 真澄【東京】
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