【主張】職安もブラック企業拒絶
本紙報道によると、厚生労働省は、来年3月末から全国ハローワークにおいて、全求人申込みを対象とする不受理制度をスタートさせるという(10月21日号1面に詳細)。労働基準法違反などを繰り返す企業などからの求人申込みを一定期間にわたり受け付けない制度である。労働基準監督機関はもとより、職業安定機関も協調してブラック企業の締め出しを図る狙いと考えられる。今後、最低労働基準などを遵守しない企業は、労働者確保も困難となり、経営が行き詰まると肝に銘じてもらいたい。
職業安定法によると、ハローワークは企業からの求人申込み全てを受理しなければならないことになっている。この原則は変わらないが、平成29年改正で求人申込み不受理対象を大幅に拡大した。求人内容が法令に違反する場合など従来からの事項に加えて、一定の労働関係法令違反歴のある企業からの求人申込みを受理しないことを可能としたのである。
「一定の労働関係法」とは、労基法の主要部分である男女同一賃金、強制労働の禁止、労働条件の明示、賃金支払い原則、労働時間規定などが該当する。最低賃金法や男女雇用機会均等法、育児・介護休業法の一部違反も不受理対象に含まれており、労働法全般にわたるといって良い。
労基法や最賃法のうち賃金や労働時間違反のケースでは、過去1年間に2回以上同一条項の違反で是正指導を受けていたり、送検・公表された場合などが危ない。従来まで若者雇用促進法により、新卒者に限って対象としていた不受理制度を全求人申込みに一気に拡大するものだ。
28年中に全国労基署が送検した件数は890件で、そのうち労基法違反関連が380件、最賃法違反関連が13件みられる。送検・公表された企業は、その後、少なくとも1年間は不受理扱いとなる可能性がある。
違反を繰り返したり、送検された企業は、ブラック企業との烙印を押されても致し方ない。労働基準監督機関からの責任追及に加え、職業紹介も受けられないとなれば、企業の存続が危ぶまれる。