企業から求められる存在に/社会保険労務士法人 竹内労務事務所 代表社員 竹内 隆
かつて、日本の企業の寿命は30年といわれていた。しかし2018年の平均寿命は23.9年と短くなっており、いずれは15年、10年になるだろうとの話もある。
リーマン・ショック以降の景気はある程度持ち直しており、全体の倒産件数は減少傾向にあるが、それは大企業の話であり、中小企業の倒産件数はほとんど減っていない。中小企業庁の発表によると、平成30年における倒産理由は、1位販売不振、2位既往のしわ寄せ、3位放漫経営、4位連鎖倒産、5位過少資本となっている。
我われ社労士が、企業と契約を結ぶきっかけとなる理由の一つに、3位の放漫経営により、労使問題が発生した、あるいは労基署から是正勧告を受けたので相談に乗って欲しいというものがある。
経営者の個人的な感情で労働条件に差が出る、タイムカードで時間管理をしているが毎月の賃金は定額で、時間外手当は支給してないといったケースが多いが、そのようなことをしていれば労使問題になるのは当然だ。労働者は定着せず、新たな人材の確保も困難となる。
有効求人倍率は2014年から1倍を上回っており、19年4月は1.63倍まで上昇している。このような売り手市場のなかで人材を確保するためには、法令遵守はもちろんのこと、年休取得率、年間休日数の増加やその他福利厚生に目を向ける必要がある。
一方労働者も、大学を卒業して企業に入社すれば一生安泰という時代はすでに過去のものであり、倒産により転職を余儀なくされることが他人事ではなくなってきている。
売り手市場とはいえ、希望する好条件の企業に転職することは容易ではない。転職をスムーズに行うためには「テクニカルスキル」が必要となる。
これは技術的な能力のことで、特定の業界・業種で身に着ける必要のある知識や技能をいい、専門職としてすぐに現場に立てるスキルのことを指す。また、同じく必要とされるものとして近年「ポータブルスキル」が注目されている。これは特定の業種・職種に捉われない能力のことで、本人の性格や人柄も含まれるとされる。
近年AIが話題となっているが、企業が抱える人の問題を解決するためには専門的知識のほか、対人関係におけるコミュニケーション能力が必要で、これはAIでは代替することのできない部分である。我われ社労士も専門的サービス業としてテクニカルスキルに加え、ポータブルスキルを養うことで、今よりもさらに企業から身近で求められる存在になり得るはずである。
社会保険労務士法人 竹内労務事務所 代表社員 竹内 隆【長野】
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