適切な指導できる職場に/千賀社会保険労務士事務所 千賀 良一

2019.12.08 【社労士プラザ】
  • list
  • クリップしました

    クリップを外しました

    これ以上クリップできません

    クリップ数が上限数の100に達しているため、クリップできませんでした。クリップ数を減らしてから再度クリップ願います。

    マイクリップ一覧へ

    申し訳ございません

    クリップの操作を受け付けることができませんでした。しばらく時間をおいてから再度お試し願います。

千賀社会保険労務士事務所 千賀 良一 氏

 労働関係法の改正により、昨今、働き方改革やハラスメントの相談を受けることが多くなった。当然ではあるが、事業所ごとに労働環境が違い相談内容も異なるので、ハラスメントに対する改善内容も多様になる。

 先日、顧問先の月例勉強会でパワーハラスメントに関する研修会を開催させていただいた。管理者を対象に「職場でどのように指導・育成を進めたら良いのか」をテーマとし、部下との接し方について会社組織の共通認識を持つことを目的としたものであった。

 この研修会には、社長や役員も出席され、改めてパワハラを「しない・させない・許さない」との方針の再認識からスタートし、進めていくこととした。

 パワハラ防止対策の法制化により明確となったパワハラの定義、6つの行為類型を説明し、パワハラの概念の整理を行った。また、判例や事例によるパワハラの該当不該当の判断について意見交換も実施した。

 その後、管理者一人ひとりに職場での注意・指導に対し、部下から「課長、それパワハラですよ!」と言い返されたケースの有無について聞いてみた。

 すると、一部の管理者において、パワハラの指摘を受けたことがあることが判明。「言い返された部下に今後、指導がしにくい」とも発言し、困った表情をされていた。

 もう少し詳しくその時の状況を聞いていくと、他の管理者から「パワハラと受け取られる部分がある」、「強い口調で注意しているが業務上の適正な範囲なのではないか」とか「自分も同様に強く注意をすることはあるが、パワハラと言われたことはない」など、いろいろな意見が出された。

 注意・指導の現場において、パワハラであるかないかの線引きは難しいものがある。たとえ相手が不満を感じても、一律にパワハラにはならない。「業務上必要かつ相当な範囲」を考えるとき、「平均的な労働者の感じ方」を基準とし「労働者の主観」にも配慮すべきとされている。しかし、労働者の感じ方は、業種や企業文化、また職場によっても大きく異なる。

 指導者が注意・指導する場面において萎縮することのない、本人の意に沿わないだけで争うことのない、「適切な指導をする、受けられる」職場が望ましい。これには、企業ごとに差異のある「業務上必要かつ相当な範囲」の基準を明確にし、労使間でパワハラに対する認識の統一化が重要である。

 今後も過去の判例を踏まえながら、勉強会等を通じてお役に立てれば幸いである。
  
千賀社会保険労務士事務所 千賀 良一【岐阜】

【公式webサイトはこちら】
http://www006.upp.so-net.ne.jp/senga/

令和元年12月9日第3236号10面 掲載
  • 広告
  • 広告

あわせて読みたい

ページトップ
 

ご利用いただけない機能です


ご利用いただけません。