【主張】致命的だった賃金伸び悩み
2019年が早くも終わろうとしている。振り返ると、今年も思ったような賃金上昇はなく、経済成長率も横ばいで、デフレ傾向から脱却できなかった。毎年同じ目標を掲げながら、達成できない状態が続いている。
横ばい状態がさらに長引けば、経済・技術立国としての日本の立場が揺らぎかねない。一刻も早く停滞から脱し、日本として新たな道を切り開いて行く必要がある。政府は、大規模金融緩和とともに積極的財政政策に転換し、改めて賃金引上げと消費拡大を最優先すべきである。
アベノミクスでスタートした金融緩和を柱とする経済政策は、志半ばでブレーキが踏まれてしまった。その結果、賃金は今年も伸び悩みに終わった。毎月勤労統計調査の現金給与総額(確報)をみると、平成31年1月は27万2130円、令和元年9月は27万1945円で、9カ月で約200円減少した。春季労使交渉において、首相官邸が毎年のように賃金引上げ要請を実施してきたが、ほとんど効果がなかったといわざるを得ない。
消費税増税も最悪のタイミングだった。消費税増税自体を反対しているわけではないが、デフレ傾向の脱却が明確となった後で実行すべきだった。賃金が上がらないうえに、消費に対するペナルティーである消費税増税を強行してしまえば、明らかに国民のマインドは冷え込む。
しかし、光明がないわけではない。12月に入り、政府が13兆円規模の補正予算を組むとしている点だ。報道によると、第2次安倍政権下で最大規模となる可能性があるとしている。台風災害からの復旧・復興に加えて、海外経済リスクや消費増税、東京五輪後の景気下振れへの備えを図るという。報道では、世界最大の債務を抱える政府の財政規律を懸念する声はかき消されたと締めくくっている。
専門筋によると、10兆円規模補正予算であっても単発では効果が薄いとの見方がある。財政規律を一旦棚上げにして、デフレ傾向脱却まで継続する決意をしてほしい。今となっては、賃金上昇、消費拡大へ向け唯一効果が期待できる政策である。