【今週の労務書】『日本公的年金政策史―1875~2009』
2012.03.26
【書評】
長期的視野で変遷解説
本書は、わが国の公的年金制度の確立とその変遷過程を、主に昭和の時代から政権交代が実現した2009年までの70年間にわたり追いかけた政策史研究である。公的年金それ自身を総合的かつ体系的に通史としてとらえた唯一の研究業績であり他に類を見ない。
公的年金制度が現在のように複雑になり、多くの国民に分かりにくい制度になってから久しい。筆者は、その複雑さをもたらしたものの一つに年金形成の初期から数度にわたって行われた「時代の要請」に基づく見直しがあると指摘。
成立期から精緻に分析を行い、年金制度の未来を語る上でも重要な事項を示している。社会保障と税の一体改革の必要性が叫ばれる今、年金制度の持つ意味を問い直す一冊といえる。
(矢野聡 著、ミネルヴァ書房 刊、TEL:075-581-5191、8000円+税)
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平成24年3月26日第2866号16面 掲載