【主張】来春も政労使で賃上げを
連合は、このほど開いた中央執行委員会で、2017春闘における賃上げ要求を、今年と同様「2%程度」とすることを決定、いよいよ次期労使交渉がスタートラインに着いた。3年連続でベアを含む賃上げが達成されたが、消費が上昇しない現実を直視した要求水準だという。
経済同友会の小林喜光代表幹事も記者会見で17年労使交渉について言及。定期昇給を含めたトータルな賃金引上げはまだ十分考える余地があると前向きな姿勢を示した。一律とはいかないが、ベアを含む2%賃上げは「大きな目標」と話している。
消費者物価上昇率2%をめざすアベノミクスで始まった政労使による「管理春闘」は、成熟した資本主義経済にふさわしい画期的なものであり、17年労使交渉も同方式を引き継ぎ、高賃上げにつなげる努力を期待したい。消費拡大に向けた正念場であり、経営に余裕のある企業は、世間水準にこだわらず、大胆な賃上げ方針で臨むべきだ。
消費拡大が進まない背景として、消費税8%への引上げダメージが予想以上に多大だったことが指摘できるが、ここに来て労働分配率が下落傾向にあることも響いている。財務省の統計によると、リーマン・ショック後の11年に72%程度へ上昇したものの、その後下落に転じ15年には67%となった。
労働分配率とは、企業が稼ぎ出した付加価値がどれだけ人件費に回ったかを表し、それ以外はすべて資本形成に充てられたことを意味する。付加価値の労働への分配は現在への対処のため、資本への分配は将来のためというのが一般的だが、この考え方を修正してもらいたい。
企業の内部留保は年々拡大し、とうとう380兆円に到達しようとしている。このままだと、いずれ日本のGDPに肩を並べかねない。労働への分配の多くは、その年度ごとに消費してしまい、企業の将来へどう影響するか判然としないのは確かである。しかし、労働力人口の減少で、人材育成の重要性がかつてないほど高まっているのも事実だ。労働への分配も企業の将来を左右することになろう。