【安全衛生・お薦めの一冊】『工場法小史』
2020.01.28
【書評】
覆される「ザル法」の印象
労働時間規制や労働災害防止について勉強している際に、わが国はいつからこのような法体系を取り込んだのか、と思ったことはないだろうか?
本書は、明治44年に制定、大正5年に施行された「日本最初の労働者保護法規」である「工場法」の通史。同法成立前夜から昭和22年の労働基準法施行による廃止までを追っている。
工場法といえば、著者曰く「ザル法」との誹りを受けることが多く、「戦前の紡績業が女工哀史一色で塗られていた」といったイメージが強いという。
しかし、足跡を見直してみると、その印象は大きく覆される。児童の就学率を向上させ、児童の深夜業を禁止させたほか、労災疾病データから健康保険法を生み出し、労働災害防止に貢献したことなどを膨大な文献から明らかにしている。
安全文化が先人の努力の賜物であるだけでなく、現場で働くすべての者に責任があることを気付かせてくれる。
(横田隆著、中央労働災害防止協会刊、TEL:03-3452-6401、A4判、112ページ、3500円+税)
2020年2月1日第2347号 掲載