【主張】急ぐべき裁量労働制拡大
経団連がまとめた2020年版「経営労働政策特別委員会報告」によると、Society5.0時代にふさわしい労働時間制度として、裁量労働制の対象拡大と高度プロフェッショナル制度の普及を提言した。現在、厚生労働省内で行っている裁量労働制の議論をスピードアップし、遅くても令和3年の通常国会へ関連法案を提出すべきである。普及が進まない高プロ制も適用基準や手続き緩和を検討するよう訴えたい。
経労委報告は、これから始まる「働き方改革フェーズⅡ」がめざすものとして、Society5.0を掲げた社会の創設に置いた。デジタル技術を活用して顧客や社会の課題を解決し、新たな価値を生み出す取組みを充実させていく必要があるとしている。その推進力は「働き手」にあり、意識や考え方の変革が求められるという。
日本のデジタル技術が相対的に低位に甘んじている大きな要因は、世界に類をみないほど長期にわたって続いたデフレとともに、専門技術を有する「ジョブ型」社員に適合した働き方が今一歩拡大しない点にある。工場労働者の労働規制を中心とする労働基準法を随時見直し、Society5.0時代に急いで対応すべきである。
「ジョブ型」社員に適合した働き方の一つに、裁量労働制がある。とくに、ホワイトカラーを対象とする企画業務型裁量労働制の積極的拡大を進め、主体的な働き方の拡大を実現して欲しい。併せて、成果に応じた処遇の確立によって意識改革が促進されればデジタル技術のイノベーションに結び付くだろう。
現在、厚労省内で裁量労働制の見直し議論が行われているが、進展が遅過ぎるとしかいいようがない。働き方改革関連法案が成立したのは平成30年の通常国会であり、丸2年が経過しようとしている。未だ実態調査すら終わっておらず、対象拡大についての本格議論は始まっていない。
高プロ制も創設時には社会的に注目を浴びたが、普及しているとはいい難い。世界の技術革新は急速に進んでおり、労働規制改革を遅らせてはならない。