【主張】真の「働き方改革」めざせ
第2次安倍政権は、2012年12月の発足以来7年以上が経過し、終盤を迎えつつある。大規模金融緩和による雇用情勢改善には目を見張るものがあるが、このままだと最終目標であるデフレ脱却と富の拡大については、達成が困難な状況となってきた。機運が高まってきた働き方改革も、富の拡大が伴わないと画餅に等しい。昨秋以降の景気悪化を直視し、急いで経済政策の転換を図らなければ、後世に汚点を残しかねない。
安倍政権の最大の貢献は、雇用情勢の大幅改善にあることは誰の目にも明らかだ。有効求人倍率は、平成30年をピークに下落傾向となっているものの、依然として1.6倍程度が続いている。だからこそ、デフレ脱却のチャンスである。雇用情勢が落ち込んでしまったら、消費が拡大するはずがない。
労使間で大きなうねりとなってきた働き方改革は、デフレ脱却による富の拡大が前提にないと、希薄なものとなってしまう。生産性を向上させて賃金が上昇し得る環境が整わなければ、かえって働く者の貧困化を招く懸念がある。
たとえば、働き方改革の号令の下、多くの企業で広がりつつある残業時間削減の動きは、健康やストレス面では支持できるが、働く者の収入減につながってしまったら経済全体を押し下げてしまう。従来の収入を維持しながら労働時間を削減するには、全体の富の維持、拡大が不可欠なことは明らかだろう。
大規模金融緩和を柱としたアベノミクスが、バブル崩壊後の底なしと思われたデフレスパイラルから日本経済を救ったのは否定できない。就活に苦しんでいた新卒者・若者を救うことになった点だけをみても、社会に明るさと安心感を醸成させた。
しかし、インフレ目標が達成できず富の拡大が実現できていないアベノミクスは、不完全という外ない。国民にとっての真の働き方改革が実現できるよう、GDP(国内総生産)の拡大を最優先とした経済政策に今こそ転換すべきである。19年10~12月期のGDP速報値は、実質で前期比1.6%減、年換算で6.3%減と危機的状況だ。