【主張】4月の規制強化へ準備を
新型コロナウイルスの感染拡大や昨年10月の消費税増税、さらには米中貿易戦争の激化など、内外情勢の厳しさが増すなか、4月1日から時間外労働上限規制の中小企業への適用と「同一労働同一賃金」の大手企業への適用が始まる。タイミングとしては、最悪と考えて良い。厚生労働省としては、危機的な内外情勢と中小企業の経営状況を十分勘案し、臨機応変な指導・監督に留めるべきである。
なかでも、予期せぬ新型コロナウイルスの感染拡大は、日本経済にとって大きなダメージとなりそうだ。企業規模を問わず、経済全体の縮小は、そのまま個別企業の疲弊につながる。こうした状況下で労働規制の一段の強化が実施されることになる。
厚労省が聴取した企業の実情では、①消費税率改定で手一杯の企業が多く、労働規制強化への対応が疎かになっている、②「同一労働同一賃金」への対応イメージがつかめない――などとする訴えが未だ続いている。人事労務に多くの人的資源を割けない中小企業なら致し方ない。
労働規制強化に当たっては、直前まで十分な周知活動と丁寧で大規模な支援活動を欠かすことはできないのは当然として、その後の指導・監督についても柔軟な姿勢で臨むべきである。
時間外上限規制の中小企業適用に関しては、大手企業からの圧力が加われば、時間短縮したくてもできない状況となりかねない。直近の上場企業決算状況をみると、軒並み赤字や下方修正となっている。傘下の中小企業にとってもマイナスの影響となるのは明らかだ。
「同一労働同一賃金」の大手企業への適用では、通常労働者の賃金水準を引き下げないという縛りの下では、人件費アップ傾向とならざるを得ないだろう。
もちろん、改正法施行後の違反状況を放置することはできないが、個別企業の実態や訴えをよく聞き、臨機応変に対応することが何より重要となってくる。経済・社会の危機的状況に直面し、中小企業経営の持続と日本経済全体に不用意なダメージを与えないことを優先すべきである。