【主張】成熟度示すバロメーター
本紙報道によると、令和元年の休業4日以上の労働災害発生件数(2月速報値)が11万9820人となり、4年ぶりに前年同期比1552人、1.3%減少した(2月3日号1面参照)。
厚生労働省と事業者による労災防止対策がようやく功を奏してきたかにみえるが、そう判断するのは早計である。実は、平成29年同期比では4978人、4.3%増加しており、厚労省は「第13次労働災害防止計画」の目標達成に向け「進捗状況ははかばかしくない」と述べている。
令和元年の流れを継続する意気込みで対処すれば、今年も2年連続して前年比減となる可能性が高まっている。第三次産業における高年齢者や外国人労働者の労災防止を重点にきめ細かな対策を実施し、削減目標に一歩でも近付けて欲しい。
13次災防計画では、計画期間である29年4月1日~令和4年3月31日までに死亡災害15%以上減少、死傷災害5%以上減少の達成を目標に掲げている。
達成できずにいるのが、「死傷災害5%以上減少」である。死傷災害は、減少どころか毎年増加してきた。令和元年の数値が、わずかではあるが久々に減少に転じたことを積極的に受け止めたい。東京オリンピック関連の工事が盛んな時期でもあったはずだ。
令和2年は、五輪特需が終了したうえ、日本は景気後退期に突入する可能性が高まってきた。経済が低迷すれば、労災も減少するのが一般的傾向である。景気後退により目標が達成されても喜べないが、少なくても前年比減が最低目標となろう。
今年1月分の速報値では、死傷者数3524人で、前年同期比23人、0.6%減少となっている。平成29年同期比でも37人、1.0%減少で、早速好スタートを切った。
災防の柱は、何といっても第三次産業における高年齢者対策である。60歳以上の労働者数はここ10年程度で1.5倍に拡大し、労災割合は26%に達した。職場環境の改善は、いまや厚労省というより政府全体の課題となっている。先進国の成熟度を示すバロメーターと考えたい。