【人材ビジネス交差点】全世代へ自律支援を/㈱ライフワークス 代表取締役 梅本 郁子

2020.03.15 【人材ビジネス交差点】
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㈱ライフワークス
代表取締役 梅本 郁子 氏

 70歳までの就業機会確保を企業の努力義務とする改正法案、いわゆる「70歳定年法」が閣議決定された。

 2004年の高年齢者雇用安定法改正では、65歳までの雇用確保措置の導入が求められ、企業は「定年の廃止」「65歳までの定年延長」「継続雇用制度(いわゆる再雇用)の導入」のいずれかを実施してきた。しかし、現場では定年後の処遇変更や役職定年に伴うモチベーション低下という問題が指摘されている。また、バブル期に大量採用した従業員が50代に到達し、企業内の人員構成比で50代がボリュームゾーンとなりつつある(弊社の顧客アンケートによれば2015年25%→2025年42%と想定)。さらに最近では、事業転換に対応するための人材流動化策として、40歳以上を対象とする“黒字型リストラ”が増加傾向にあり、シニア人材の活用はもはや一企業の枠を越えた社会課題といっても過言ではない。

 前述の「70歳定年法」では、従来の3つの雇用確保措置に新たに以下の4つが加わり、65歳から70歳までの努力義務として選択肢が7つに広がる。①他の企業への再就職の実現、②フリーランス契約への資金提供、③起業支援、④社会貢献活動参加への資金提供。

 職業安定分科会雇用対策基本問題部会(第91回)の資料によると、企業は7つから採用する措置を従業員に提示し、相談を経て適用することが努力義務として課される。70歳までの雇用はせずとも、業務や資金を提供することになる。

 しかし、この新たな4つの選択肢は、キャリア自律していない従業員が選ぶことは難しく、多くが再雇用を選ぶと想定される。企業にとっては大きなインパクトで、人事戦略の再構築が求められるであろう。

 これまで約20年にわたりミドル・シニア向けにキャリア支援サービスを提供してきた弊社としては、今後の人事戦略テーマは「従業員のキャリアオーナーシップ醸成」になると考える。それを実現する職場環境をつくるために、以下の取組みを提案したい。

 (1)「セルフ・キャリアドック」など、キャリア研修と上司やキャリアコンサルタントによる面談を組み合わせた、従業員に対するキャリア支援の仕組みづくり

 (2)副業・プロボノ(専門知識や技能を生かして参加する社会貢献活動)等の越境経験の促進

 (3)学び直しの働きかけ

 全世代の従業員のキャリア自律を支援することで、ぶら下がり人材を抱えるリスクが減り、有用な外部パートナーを活用できる可能性が高まる。シニア人材の活躍の場が社内外に広がることは、低成長時代を脱出する可能性をも持ち合わせているのではないか。

筆者:㈱ライフワークス 代表取締役 梅本 郁子

令和2年3月16日第3249号10面 掲載
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